代表・渡部純一の記事

キーボードで打つのを、
やめました。

うちのメールも、LINEも、記事も、文面は全部AIが書きます。ただ、そのAIへの指示だけは、私がキーボードで打っていました。その指示を打つのを、やめました。いまは、話しています。

便利な道具の紹介ではありません。入れてから使えるようになるまでに、5日かかりました。その5日の話です。

2026.09.12|株式会社サマーウインド 渡部純一

道具は、買った日には
使えませんでした。

1分で、320字しゃべっていました

ある会社の密着動画を見ていたら、「打つより話す方が3倍速い」と言っていました。その日のうちに、音声入力のアプリを入れました。

6日たったので、自分の録音ログを数えました。171回ぶん残っていました。話す速さは、1分あたり320字です。読み上げ用の文章ではなく、私が実際にAIへ出した指示を数えた数字です。

効くのは長い指示です。AIには、細かく長く言うほど、思った通りのものが出てきます。その長い指示を打つことが、私の1日でいちばん時間のかかる作業でした。短い返事は、いまもキーボードのままです。全部を変える必要はありません。

日本では、ほとんど使われていません

ここで、世の中の数字も見ておきます。

スマートフォンの文字入力に音声を使うことがある人は、日本で約3割です。LINEヤフーが2026年1月に、15〜69歳の3,152人に聞いた調査の数字です。

ただ、この3割の中身を見ると、話が変わります。「キーボードの方が多い」と答えた人まで、この3割に入っています。用途の1位は、地図やルートの検索でした。つまり、仕事の文章を音声で書いている人は、3割よりずっと下です。

年代別は、思っていたのと逆でした。いちばん使っているのは60代で4割弱。いちばん使っていないのが10代で、2割強です。フリック入力が速い人ほど、話す理由がないということだと思います。

海外では少しずつ普及しているようです。日本で止まっている理由は、たぶん国民性です。人前で機械に話しかけるのは、気恥ずかしい。

これは、遅れている話ではありません。同じことをやっている経営者が、まだ周りにいないということです。

入れた日には、使えませんでした

ここからが本題です。

最初にやることは、「押している間だけ録音するキー」を決めることです。これが、届きませんでした。原因は1つではなく、3つ重なっていました。

1つ目。押しっぱなしに修飾キーを1つだけ割り当てると、「離した」が取りこぼされることがある。2つ目。キーボードの機種によっては、F1〜F12がキーボード側で音量キーとして処理されていて、パソコンまで届かない。3つ目。押し続けるつもりのキーを短く触ると「切り替え」の扱いになり、録音が開きっぱなしになる。

どれも、説明書には書いていないことです。3つ重なっていたので、1つ直しても動きませんでした。

4時間、録音が止まりませんでした

3つ目で、事故が起きました。

キーを短く触っただけのつもりが、録音が始まっていて、4時間止まりませんでした。ファイルは469MBありました。別の日には39分。家の中の会話が全部文字になって、画面に貼られていました。

ここで「次から気をつけよう」と考えるのは、間違いです。注意力は、忙しい日に減ります。減った日に事故が起きます。

やったのは、見張りを1つ作ることでした。30秒ごとに録音の状態を見て、5分を超えていたら強制的に止める。それだけです。以後、同じ事故は起きていません。直すのは、注意力ではなく仕組みです。

残りの4日は、全部、調整でした

精度の話も、実測で書いておきます。

短い一言は、8割方そのまま入ります。落ちるのは、珍しいカタカナ語を単独で言ったときです。ある機能の名前を一言で言ったら、頭の3文字が消えて出てきました。間を0.9秒空けても同じです。ところが、同じ言葉を文の形に入れて言うと、残ります。設定の問題ではなく、言い方の問題でした。

文字を起こす仕組みも選び直しました。同じ1.4秒の録音に、片方は19.5秒かかり、もう片方は0.4秒で返ってきます。遅い方は、精度が良くても使わなくなります。1回待たされるたびに、キーボードに戻りたくなるからです。

ここまでで5日です。買ったのは1日目で、あとの4日は全部、運用の調整でした。

御社のAIが、使われていない理由

「AIを入れたのに、社員が使っていません」という相談を受けます。

道具のせいであることは、あまりありません。いま書いた4日ぶんを、社内で誰もやっていないだけです。

キーの決め方、事故の止め方、言い方の癖、遅いものを外す判断。これを誰か1人がやって、決まった形にして配る。そこまでやって、道具はやっと道具になります。配っただけのものは、数日で開かれなくなります。

うちは、これを自分の会社でやってから、お客様の会社で同じことをやっています。順番が逆だと、続きません。

御社のサイトを拝見して、いま消せる作業を5つ書き出します。1つ目は、今日お送りします。メール1通です。(AIは、営業日を知りません)

費用はかかりません。ご用意いただくものもありません。読んで違うと思われたら、そのままで結構です。私が1人で全部やるので、月5社までとさせていただいています。

御社の消せる作業を、書き出してもらう

それでは、ご連絡をおまちしております。

追伸

この記事のもとになった指示も、話して出しました。1文字も打っていません。読んで、公開ボタンを押すところだけが、私の仕事です。

追伸2

全部を音声にする必要はありません。うちも、短い返事はキーボードのままです。変えたのは、いちばん長いものを打っている場面だけです。道具を1つ入れるより、いちばん長い作業を1つ選ぶ方が先です。

よくある3つ

Q. 音声入力は、仕事で使えますか。
A. 長い指示に効きます。私の録音ログ171回を数えたところ、話す速さは1分あたり320字でした。短い返事はキーボードのままで構いません。いちばん長いものを打っている場面だけを入れ替えると、差が出ます。

Q. 道具は、入れた日から使えますか。
A. 私の場合は5日かかりました。キーが届かない原因が3つ重なり、録音が4時間止まらない事故も起きています。買うのが1日目で、残りの4日は全部、運用の調整でした。

Q. AIを入れたのに社員が使いません。
A. 道具ではなく、使える形にする工程を誰も持っていないことが多いです。キーの決め方、事故の止め方、言い方の癖、遅いものを外す判断。これを誰か1人がやって、決まった形にして配る。配っただけのものは、数日で開かれなくなります。

書いた人

渡部純一(株式会社サマーウインド 代表取締役)。ネットで売って20年、累計売上80億円。著書3冊、うち2冊が続けてAmazon総合1位。現在は社員ゼロ・AIだけで自社を経営しながら、中小企業向けのAI顧問「AI経営参謀」を月5社まで。